ノート

Note

Vol.2 熊谷和徳×ハナレグミ

2022.09.02 UP

国内外の数多くの一流ミュージシャンやアーティストとのコラボレーションを行ってきた

日本とニューヨークを拠点に世界で活躍するタップダンサー熊谷和徳。

そして、深く暖かい声と歌唱に多くのファンが魅了されるシンガーソングライター、ハナレグミ(永積 崇)。15~16年前からの友人というふたり。

昨年9月の共演を経て、新たに作り上げる“表現”とはどんなものなのか。対談の1回目。

熊谷和徳xハナレグミ02-0254.jpg

〜おふたりにとって“表現する”ということはどういうことなのか。

またお互いの“表現”についてどう思っているのか、ということから聞かせてください。


ハナレグミ:(カズは表現っていうことをすごく意識しているよね?)



熊谷:2015年から「表現者たち」というタイトルで自分のスタジオでパフォーマンスをはじめたことがスタートでした。それ以前はしばらく、ホールでの公演が続いていたんだけれど、少し行き詰ったところがあって。

なんとなく悩んでいて“表現”する場に立ち返らないと、という意味もあり、自分の居場所であるスタジオで、創作するプロセスそのものを見てもらえたらいいなと考えました。目黒のスタジオでジム・オルークさんや石橋英子さんスカパラの沖祐一さんなどと5日間連続で公演して。あまり打ち合わせをせずにやる、というのがコンセプトでした。面白い表現を持っている人にオファーしたかった。自分自身で電話して気軽に「やりませんか」と。

 

ハナレグミ:どうやって共演者を決めたの?

熊谷:まず、自分がファンであること。自分から声をかけて、自分も楽しみたいから。この人が好きだな、という人かな。

熊谷和徳xハナレグミ02-0165.jpg

~永積さんはどう誘ったんですか?

ハナレグミ:「やんな~い」って直接、ラフな感じで(笑)。カズとの出会いは15~16年くらい前。

CMでカズが踊っているのを見て、めちゃくちゃカッコいい!って思ったのが始まり。あとは、ウイスキーのCMのグレゴリー・ハインズとか、マイケルジャクソンとか、歌って踊れる世界に憧れていたんだよね。そうしたら、イベントで奇跡的に会うことができて。今はお互いに連絡を取りあって、フランクに日々のことを伝え合う関係性。ここまで日々考えていることを伝え合うアーティストはそういないんだけど、彼から意識的に投げかけてくれることが多いね。

熊谷:寂しいからね(笑)。

ハナレグミ:どうしたの。素直にそう言えるようになったの、いいね(笑)。

最初は「すげー」「やべー」人って感じだったけれど、会って話してみたら自分と近い熱量だった。リスペクトできつつ、でも遠くなくジョインできる人。多分、カズもそれを感じてくれているんじゃないかな。シンプルな投げかけに「こういうことを考えているんだな」って思う。最初の目黒のスタジオ共演もそうだよね。

熊谷:50人くらいしか入らない小さなスタジオだけど、それでもセッションを純粋に楽しんで来てくれるのがとても嬉しかったな。

 

~おふたりのセッションは、どういったものになるのか、観る側としては、なかなかイメージできにくいと思うのですが、おふたりはどうだったんですか?

熊谷:初めて会った時に崇くんは自分の曲はテンポがないからって言っていたんだけど。自分は初めて曲を聞いたときから、その中でタップを鳴らすイメージがすぐにできた。崇くんの音楽は、音楽的ストラクチャーというより景色や情景が見える。言葉から感じる自分の踊りたいイメージがかなり明確にいつも、見える。でも、その見えるイメージについてあまり崇くんと話し合ったりしたことはないかな。

ハナレグミ:そうだね。いつも僕のほうが決め込んで行こうとしちゃう。でも、カズが「いや、もうギター弾かなくていいんじゃない?」って言う。僕のほうがタップとどう交わろうかと考えてしまう。カズのほうがもっと有機的というか、リズムではなくシーンや音の表情でリンクできる広さがある。それを聞くと落ち着きます(笑)

そして、その言っている意味がここ最近分かってきた。以前は日本のCMや海外の映像でたまに見るタップダンスの知識だったから、どうしてもテンポやリズムをついついクローズアップしてしまうんだけど、カズと時間を合わせていくうちにこれって「言語」なんだって。タップの歴史を紐解いても「言語」が関係している。踊ることは言葉を表現すること。踊りやリズムの前に「言語」という意味合いがあると知って開放されました。難しいリズムの前に、もっと自由な入口での交わりがタップは歴史的に持っているんだなって。

熊谷:今までいろいろな音楽家の人とやってきたけれど、すごくリズムを気にする人ともっともっと自由にやる人といるね。タップダンスというイメージが先行すると、どうしてもリズムを合わせようとするんだけど、僕にとってはもう少しカジュアルな会話であったり、エネルギーの交換だと思ってる。だから、どんなジャンルの人とのセッションでも、根っこにあるルーツをお互いに大事にしていれば良いと思っているよ。だから、いわゆるタップのステレオタイプではなくて、感情や想いの表現として交われば「タップだからこう」ではないところで、いろいろな人と共感できると思う。

熊谷和徳xハナレグミ02-0202.jpg

ハナレグミ:“表現”というと、縦軸でなにか意思があって「俺はこういう気持ちで、こういうことをやります」という景色が見えちゃう。カズの“表現”は、何でもかんでもいいというわけでなく、自分の時間を使ったところで未知なる到達点を目指しているうえでの“表現”。自分の今信じている何か、感じている何かをその場所でさらけ出す。でも、その先は何も決まってない…。カズとやるとそういう感覚をもらう。ポップスの世界は気がつくとひとつのフォーマットに収まりそうになるけれど、カズと会うと崩して、緩ませてくれる。そういう刺激がいつもあるかな。

熊谷:自分が気をつけていることは、トラディショナルなところからあまり外れすぎてもいけないということ。自由にと言いつつも。でも、崇くんとやると何をやってもルーツが近いところにある気がする。自分の中ではポップスのフィールドにいるってあまり思ってなかった(笑)。

 

今まで自分と深く共演してくれているトランペッターの日野皓正さん、オマール・ソーサ、上原ひろみ…。その人たちに共通するのはジャンルというより、自由な発想であったり、人としての価値観が似ているところがあるのかもしれない。長年そういう人たちが自分と交わってくれるの本当にありがたくて嬉しいこと。お互いに長い時間一つのことをやってきて悩んでいることも近いのかな。

ハナレグミ:悩んでる(笑)

熊谷和徳xハナレグミ02-0211.jpg

熊谷:自分もそうだから、そこがひとつ安心できる。ある程度の年齢になると、悩まず「これでいいんだ!」という人と表現の上で「これでいいのかな」と悩みながら模索している人とに分かれていくような気がする。

タップダンサーとして長くやってきて、きっと誰とも理解し合うことができないことがある気がする。崇くんには崇くんできっとそういうことあると思うんだけど、自分と孤独に向き合うことでしか、辿り着けない『表現』の深淵のようなこと。それを崇くんの歌の中に感じることがあって、自分も励まされているよ。

コロナ禍の中で一回タップをやめてほかのことをやったほうが楽なのでは?と思った時もあったけど、今、そのトンネルを抜けて、やっぱりタップを踊り続けたいという初心に戻ってる。

悩むことは尽きないけど、やっぱり大好きなんだよねタップが。

~今回は、写真、絵、詩など新しいことが舞台に何か反映されると聞いていますが。

 

 

ハナレグミ:まだなにも…(笑)。

カズから出てくるものを聞いておもしろそうだな、って返している段階です。

多分だけど、何か決め込んでやるような感じじゃないと思う。その時間にしか立ち上がってこない何か。その道しるべ的に言葉か写真か絵が出てくるという感じなのかな。まだわからないけど。

 

そういえば、息抜きのつもりで、最近まで黒人の点描画ばっかり描いてました。もともとブルースマンみたいなギターが弾きたいと思って映像を見ていたんだけど、それでは近づけないような気がして。手順を覚えるより絵を描いたほうがうまくなるんじゃないかと思ったんですよ。描いていたら絵の中の人とおしゃべりしている気がして「これだったんだ!」って教わるような感覚があったんだけど、1枚描くのに8時間くらいかかる(笑)。終わるとへとへとで、数日なにもできなくなるんですよ。

熊谷:息抜きでもエネルギーとられるよね。

ハナレグミ:ものすごい取られる。それでシャッターを押すだけでいい写真に乗り換えました。

 

 

熊谷:写真のエネルギーはどう?

ハナレグミ:写真もやばいね(笑)。きれいなものやかっこいい建物ではなく、なんてことないどこにでもある路地とかなんとも言えない気持ちになるものを全部撮影してます。どうしても気になるもの、ものすごい魅かれるのはどうしてなんだろう…というもの。自分の内側から出てくる、どこにも分類できない何か。感情を刺激してくる何かを拾っている状態。でも、それは歌っていることとつながっている気がしているんですよ。

つづく

S__125575185.jpg

photo by ハナレグミ

S__125575186.jpg

photo by ハナレグミ

文・吉田葉子

撮影:HAYATO IKI

【表現者たち New Beatnik 開催概要】

●公演日程:2022年9月22日(木)17時開演

●会場:恵比寿ガーデンホール https://gardenplace.jp/culture/hall.php

●チケット料金:8,900円(全席指定・税込)

●一般発売:2022年7月23日(土)10時

●チケット取り扱い:

・キョードー東京 https://tickets.kyodotokyo.com/kumagai2022 

・イープラス https://eplus.jp/kumagai2022/

・チケットぴあ【Pコード:514-172】 https://w.pia.jp/t/kumagai2022/ 

・ローソンチケット【Lコード:32779】https://l-tike.com/kumagai2022/

 

【お問い合わせ】

キョードー東京:0570-550-799 (平日:11時〜18時 土日祝:10時〜18時)


【主催】

キョードー東京 イープラス