ノート

Note

Vol.3 熊谷和徳×ハナレグミ 

2022.09.07 UP

タップダンサー熊谷和徳とシンガーソングライターのハナレグミ。

9月に行われる公演で新たな“表現”をパフォーマンスする。

“表現”から広がる対談の2回目。

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ハナレグミ:さっき、タップを選んだことをカズが話していたけど、僕が歌を選んだ理由は分からないなあ。歌は好きなんだけど、どうやら何かを伝えたいわけではないし。

 

熊谷:シンプルなようでいて複雑だものね。

ハナレグミ:歌詞に魅かれて歌うこともあるけど、自分が歌っているときに何かが動きだすイメージ。

 

最近知った生物学者、福岡伸一さんの「動的平衡」。まだ、掘り下げられていないんだけど、考え方が近いのかな。

人間は日々、新しいものを取り入れ、体の中にあるものはどんどん捨て、新しいものが生まれる。数年後にはまるで新しい体になっていて、川の流れのようにいつも流れている、とういう考え方。常に新しいとは、自己はどこにいるんだ?って……。いつも流れの中にいて、いつもすべて途中なんだと。それを聞いたときに、歌っている感覚に近いと思った。音を出したときに、その空間と共鳴していることに僕は重きを置いているんだと。

熊谷:ティク・ナット・ハンという禅僧がいるんだけど、彼も同じようなことを言ってるね。細胞は1日1日同じではない。毎日生まれ変わっている。

 

 

ハナレグミ:僕の歌の中で立ちあがってくる気持ちのひとつ、「せつなさ」って大きな要素。取り返すことのできない、流れていく場面や時間の中にいると、今がすばらしかったら、ずっとそのままにしておきたい。

 

でも、それは絶対的に無理なこと。その中に生きている雄大さと自由さ。どこまでも変わっていける自由さと共に、とどまれない「せつなさ」もある。その瞬間はいつも続かないという「せつなさ」。日々湧き上がってこない?「せつなさ」とか「いとしさ」とか。感覚的なんだけど。

熊谷:崇くんの写真やいろいろなものから感じるのは、日常の生活でいつも見ているものの中にある特別さ。特別でない中にある特別。すべてが特別ということ。そこに気を配っているなという感じがする。過剰に普通っぽくしている(笑)。

 

 

ハナレグミ:え、そうかな(笑)

熊谷:別のインタビューで崇くんはどういうアーティストですか?って聞かれたんだけど、

すごい悩んで答えたのが「普通ですね」(笑)。でも、普通というのはすごく深い意味がある。

 

普通でいること、普通なものに何かを感じることってすごく難しい。特に僕らのようにビジネス的な環境にいると普通でいることが一番難しいと思う。崇くんは、そこにすごい気を配っている。それが少しストレスになるんじゃないかなって。

 

 

ハナレグミ:でも、それを手放すと歌が下手になりそうな気がして…。

 

 

熊谷:普通の感覚ね。

 

 

ハナレグミ:高いステージに立って何が言えているんだろう、といつも思っていないと怖いというか。

でも、そこから歌わないと僕には何が残っているんだろうって気がしちゃう。今、カズが言ってくれたことは自分が本当に大事にしていること。大げさなドラマは自分が言うことじゃなく多くの人ができているから、僕はあまりそこには興味はなくて。

 

さっきまでそこにいた人が今はもう椅子にはいないとか、さっき吸っていたたばこの吸い殻に宇宙を感じる。僕にとっては、そちらのほうがファンタジックなのかもしれない。

 

 

熊谷:かなりミクロの景色を抽出している気がする。見逃していたことの中にある美しさというか。

 

 

ハナレグミ:そうだね。自分がそういう世界が好きだからだろうね。

 

 

熊谷:今の世の中はもっと過激なことを求めているよね。そういう中のポップスの在り方は苦労があるのかな。これだけものすごいスピードで世の中が変化していると本当に難しい。毎日悩んでいるよ。

 

 

ハナレグミ:その悩みは、生きていたら普通にある悩みだよね。そこから飛躍的に飛び越えられるのが音楽。だから音楽をやっているのかな。カズのように近いところで話ができる人がいて、自分も自分の時間に没頭できる。

 

ふとした瞬間に鳥肌がたつくらい幸せだって思います。

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~普段の楽曲作りは時間を決めて行っているんですか?それとも、時間を決めずに?

ハナレグミ:僕は目標があって作ります。普段からライフワークとして曲を作っているタイプではないです。ただ、声を出すということはしてます。曲を作るとか詩を書くとかは自分の中では別の作業。どちらかというと声を出すことや空間で音を出すほうが、日々意識してやっているライフワーク。

シンガーソングライターの場合、この場所で体を使って音を鳴らす時間、ようはライブすることと、詩とメロディーを作る時間とふたつある。僕はそういうすみわけになっています。

 

 

~熊谷さんの場合は、フリや構成を考える時間があるのですか?

熊谷:どうしているかな?いろんなスタイルがあるからね。

 

振付をがっちりと作ってやるようなショーというよりは、外枠のコンセプトを決めて、

その中で即興的に自由にタップを踏むということがライフワーク。

公演では頭を真っ白にして聞こえるものに集中している。舞台に出る前に何も決めないと不安や緊張はあるんだけど、出た瞬間に波にのるというか一瞬でゾーンに入る。

~今回のステージは、どういうものを目指しますか?

熊谷:崇くんに限らず表現者が舞台に立つと、存在そのものでどうにでもなる。その人の存在やエネルギー、自然にやってきたことをそのまま出すだけで形なっていく。

 

だけど、崇くんとは今回だけの「何か」、今までやっていないものをトライしたい。今回の為のオリジナルの作品の創作。いま、最近描いている絵を送ったり詩を送ったりいろいろな形で崇くんに投げています。

ハナレグミ:僕は「いいね~」「いいよ~」と返してます(笑)。答えがないものというのが、どうやら僕らの共通するもの。どこに行くんだろう、というものをみんなで観察する。

オーディエンスも含め限られた時間に集まった場所で、小さな音から大きな音まで両方出したい。自信を持った音だけでなく不安げな音もひとつのいい音だと思うんだよね。

決まった音を出すのではなくて、ライブってそういうものだと思う。

「生」って受け取る側もかなりエネルギーがいるけれど、そういうライブになるといいな。

熊谷:受け止めきれないくらいのエネルギーになるかもね(笑)

つづく

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ここ最近、熊谷が練習の合間にスタジオで描いている絵。

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​作・熊谷和徳

​作・熊谷和徳

​文:吉田葉子

撮影:HAYATO IKI

【表現者たち New Beatnik 開催概要】

●公演日程:2022年9月22日(木)17時開演

●会場:恵比寿ガーデンホール https://gardenplace.jp/culture/hall.php

●チケット料金:8,900円(全席指定・税込)

●一般発売:2022年7月23日(土)10時

●チケット取り扱い:

・キョードー東京 https://tickets.kyodotokyo.com/kumagai2022 

・イープラス https://eplus.jp/kumagai2022/

・チケットぴあ【Pコード:514-172】 https://w.pia.jp/t/kumagai2022/ 

・ローソンチケット【Lコード:32779】https://l-tike.com/kumagai2022/

 

【お問い合わせ】

キョードー東京:0570-550-799 (平日:11時〜18時 土日祝:10時〜18時)


【主催】

キョードー東京 イープラス